2011年8月8日月曜日

前橋レポートの中身(予防接種は効かないのウソ)

インフルエンザ予防接種の有効性を議論する際によく登場する「前橋レポート」の内容について検証してみました。中身は、長文で若干難しい部分もありますので、はじめに概略を載せておきます。できるだけわかりやすい内容にしたいので、説明不足になる点もありますが、詳しい内容についてはそれぞれの記事を参照してください。

前橋レポートとは

「前橋レポート」は、インフルエンザの集団予防接種を独自の判断でやめた前橋市が、予防接種中止後の状況について調査し、その結果をまとめたものです。前橋市医師会が中心となって、学校の保健の先生らが協力して行いました。

レポートではいくつかの調査が行われましたが、ポイントとなるのは2点です。ひとつは予防接種を実施している近隣の自治体と、中止した前橋市との比較。もうひとつが、予防接種を中止したことで、血中の抗体価がどのように変化したかを調べたものです。

接種と非接種との比較については、1年目が1~2月、2年目が11~12月で、異なる期間での調査でした。抗体価調査については、当時の小学2年生が6年生になるまでの5年間について行われました。「5年間に亘る大規模調査」というのはこの部分です。

前橋レポートでは、ほかにも接種廃止で医療費がどのように変化したか、欠席率がどう変わったかなども調べています。

調査の問題点
発表された調査結果は専門家からは数々の問題点が指摘されました。一番の問題点は、インフルエンザになった児童の定義付けです。調査では、発熱や欠席をもってインフルエンザと見なしています。


これは調査手法としてはかなりアバウトです。ただの風邪でも熱がでたり、休んだりしますし、それ以外の理由で欠席する子も大勢いたでしょう。例えばズル休みで3日間休んだようなケースもこの調査ではインフルエンザの発病者としてカウントされたことになります。


調査では、予防接種の有効率を20~30%と結論づけていますが、インフルエンザ以外の病気で休んだ児童が相当数含まれているため、実際の有効率とは大きくかけ離れた数字です。事実、海外の信頼できる複数の調査によれば、ワクチンには70~90%の有効率があるとされています。


検証結果
さて、今回、前橋レポートについて内容を検証してみましたが、巷で言われているような「前橋レポートによって予防接種の有効性は否定された」という見解は明らかに間違いです。


まず、接種群と未接種群との比較では、予防接種の有効性を示す結果がはっきりと出ています。レポートでは、接種率50%以下の地域を接種校にカウントするなどで、意図的に有効率を低めるように数字が操作されていたようです。しかし、実際には接種の有無でインフルエンザになる確率にはっきりと違いがでています。


次に、抗体価の調査でも、自然罹患でできる抗体価上昇より、予防接種のほうが発病を防止する効果が高いという結果が出ています。予防接種の有効性が数字としてはっきりと出ていました。調査では、感染率と発病率という異なる2つの指標を比べることで、意図的に予防接種の効果を低く見せかけていたこともわかりました。


そのほかにも、前橋レポートでは、予防接種と医療費との関係性を調べる際に、児童が少ない国民健康保険のデータを使うなど、予防接種の有効性を低くみせるために、意図的にデータの取捨選択をしているのではないかと感じさせるような点が多々見受けられます。


全文を読んでみての印象ですが、調査は「予防接種は効果がない」という結論を前提に、かなり恣意的な解釈が加わっているようです。むろん、当時はインフルエンザの簡易判定キットなどない時代ですから、今のような正確な調査が行える環境ではありませんでした。しかし、そのことを割り引いても、かなり偏った内容の調査結果であったことは明らかです。詳しくは、それぞれの項目ごとに検討した結果を載せているので、そちらをご参照ください。