2016年5月24日火曜日

子宮頸がんワクチン はたともこ理論のウソ(その1)

子宮頸がんワクチンは必要ありませんなる書籍が出ています。元参院議員のはたともこという方が書いた本。副題は「定期的な併用検診と適切な治療で予防できます」と記されています。ちょっと問題ありな内容なので検討してみましょう。

子宮頸がんワクチン有効の可能性は非常に低い〔はたともこ理論1〕
日本人一般女性のHPV16型の感染率は0.5%、18型は0.2%。感染しても90%は自然排出、持続感染して前がん病変の軽度異形成になっても90%は自然治癒。したがって16型・18型の中等度、高度異形成になる人は、0.7%X0.1X0.1=0.007% 10万人に7人ということになる。

感染率0.7%は少ない数字か?
前橋レポートのときと同様に、公平を期すため著者の採用した数字で検討してみます。

ここでは、出産可能な年齢ということで18歳から42歳のケースで考えてみましょう。はた氏の挙げた数字をもとに計算しただけなので、これが正しい(実際の)数字というわけではありませんのでご注意を。

まず、女性の人口が1歳あたり50万人と仮定して18-42歳で1,250万人です。HPV16型18型の感染率が合わせて0.7%(はた氏書籍に掲載の数字)です。

感染者は1,250万人x0.7%87,500人。この数字だけをみると「少ないなあ」という感じでしょうか?
この数字に「はたともこ理論」の計算式(x0.1x0.1)を当てはめると、中等度、高度異形成になる人は1,250万人中875人(0.007%)ということになります。

なんだたった875人かと思った人は騙されています。この875人というのはあくまで単年の数字でしかありませんから、実際の確率(18歳の女性が42歳になるまでに感染する確率)とは計算が違ってきます。

著書によると、感染しても2年間90%の人はウイルスが自然排出されるということですから、感染者87,500人のうち、90%78,750人2年後にはウイルスがなくなっています。しかし、年度ごとの感染率は常に一定になるので、2年後には新たに78,750人の感染者が発生していることになります。

2年後には新たに87,500人X90%=78,750人の感染者が出てくるということは、1年間で39,375人の感染者が現れるということになります。これに25年を掛けると、正しくは1,250万人のうち約100万人(8%)HPV1618型ウイルスに感染していることになります。

よって、18歳の女性が42歳になるまでの間に、HPV1618型が原因で中等度、高度異形成になるのは1,250万人中1万人となります。パーセンテージでいえば0.08%です。これでも少ないと感じますか?では、言い方を変えてみましょう。1,250人に1人の確率で中等度、高度異形成になるということになりますが、この確率は果たして低いのでしょうか?

ちなみに、著者が引用した感染率の元データについて調べてみたところ、1993-1995年に沖縄県で実施された調査で、20年以上前とデータとしてはかなり古い。さらに調査対象者の平均年齢が52.4歳と高齢で若年層が少なく、日本にまだ貞操という概念があった世代のデータである点は注意が必要。HPVが性行為で感染することを考慮すると、はた氏が論拠としてあげているHPV感染率0.7%という数字は、実態とはかなり乖離がありそうなことを付け加えてもいいでしょう。