2016年6月24日金曜日

子宮頸がんワクチン はたともこ理論のウソ(その3)

子宮頸がんワクチンは必要ありませんから引用してみましょう。

【結論】検診により、HPVの感染、持続感染、軽度・中等度・高度異形成が発見されれば、適切な治療によって前がん病変の段階で完治する。すなわち、定期的な併用検診(細胞診+HPV・DNA検査)によって、子宮頸がんは予防できる

はたともこ理論」では、上記のケースは「無事完治、子宮頸がんは予防できました」ということになりますが、果たしてそうでしょうか?この理論には大きな穴があります。ここで少し整理しておきましょう。

HPV感染、異形成の治療について
子宮頸がん検診で、HPV感染や、軽度~中等度異形成が見つかっても基本的に治療はしません。逆を言えば、外科手術以外に有効な治療方法がないのです。

ですから、自然治癒する可能性がある初期~中期の段階では、切除手術は行わず経過観察となります。その後、半年に1度のペースで定期的に検査をしていくことになります。いくら検査で病変が見つかっても大きくなるまでは放置しておくしかないということです。

検診のみの予防のリスク
上記のような特徴を理解した上で、子宮頸がんの予防を、はたともこ氏の言うように子宮頸がんの予防を検診だけに限定することで次のようなリスクが生じます。

①精神的負担
HPV感染や異形成がみつかり、経過観察となれば患者の精神的負担は低くはありません。将来がんになるかもしれないという不安は、HPVウイルスの感染が陰性と出るまで続きます。また、円錐手術で異形成を切除しても再発の可能性があることから安心はできません。

②検査の見落とし
細胞診検査は、医師が目視で確認することから見落としも多いのが実際です。いきなり高度異形成やがん化したものが出てくるということもあります。細胞診で異常が発見できる確率は6~8割程度と言われています。2~4割の確率で見落としが生じるということを意味します。

③手術のリスク
持続感染、軽度・中等度・高度異形成、上皮内がんが発見されれば、適切な治療によって、ほぼ100%治癒し、子宮頸がんは予防できる、ということです。(P29)

はたともこ理論では、手術について上記のように記述しています。文中では、一切触れられていませんが、外科手術には当然リスクがあります。麻酔や注射の影響、執刀ミス、また、子宮を部分的に切除すれば術後、流産・早産のリスクは上昇しますし、全摘出すれば子供は埋めなくなりますが、そのようなリスクについてこの本では一切触れず、「ほぼ100%治癒する」で片づけているのです。

そもそも、検査でがんが発見されても、「適切な治療によって、ほぼ100%治癒」するのであれば、どうして年間3000人近い人が子宮頸がんで亡くなっているのでしょうか

ワクチンでは数十万人に一人の確率で(因果関係不明な)有害事象が起きていることを問題にしながら、手術のリスクについては一切触れず、ほぼ100%治癒するから大丈夫と言い切る姿勢には疑問を感じます。

子宮頸がんワクチン はたともこ理論のウソ(その2)

前回の続きです。はたともこ氏が国会で取り上げた沖縄の調査ですが、データの出所がみつかりましたので少し検討してみましょう。

沖縄県のHPV感染率調査
調査対象は1994-1995年沖縄県で子宮頸がん検診を受診した一般女性4,078人。HPV感染の有無と何型に感染したのかとをPCR法という検査方法で調べたようです。それによると、調査対象者の平均年齢は52.4歳、そのうち20代は275人(6.7%)しかいません。20年以上前の沖縄での調査で、かつ平均年齢が異様に高いというあたりがデータとして有用なのかどうかは疑問ですが、結果は前回で少し触れたとおり。16,18型の感染率は0.7%となっています。

注目すべき点としては、16、18型を含む発癌性HPVの検出率。他の年齢群では概ね10%前後であるのに対して、20代では20%と他の年齢の倍以上になっている点です。

20代の年齢が極端に高いということには、2つの可能性があります。ひとつは、20代では性交渉が多いからHPV感染率が高くなるというもの。この考え方はなんとなくしっくりきますね。若い人のほうがセックスに対する敷居が低く、不特定多数と性交渉を持つので、HPVに感染する確率が高いということです。年をとればセックスの回数も減るし、相手も限定されてくるので感染リスクが低くなり感染率が低いという考え方です。高齢者のほうが貞操観念が強いため感染率が低くなるという考え方もありますね。

もうひとつは、そもそも20代のサンプル数が他の年齢層と比べて少ないので、正確な数字が出てこないということ。母数275人で感染率20%なら、感染者数は55人。この数値ならまあ問題ないかな。

東京の調査では20代の高リスク群感染率が27%超
若年層のほうが感染率が高くなっているということについては、他の研究でも同じような傾向が出ています。2006年から2007年に東京都でおこなわれた調査。こちらは母数383件で、10代が16名20代が222名30代が105名40代が17名など。沖縄の調査よりは平均年齢が低く参考になるかなといった感じです。

東京の調査では、高リスク群の検出率が10代で50%20代で27.8%30代で16%40代で17%と沖縄より高い数値を示しているのが注目すべき点。沖縄の調査より10年後ということを考慮すれば、若年層になるにつれ貞操観が低下し、不特定多数とセックスする傾向にあり、HPVの感染率が上がっているといえるのかもしれません。若年層での感染率が上がっているという厚労省の報告とも一致します。

同様の調査は、北陸地方でも行われており、15-19歳の半数以上に、20-24歳の36%に高リスク群 HPV感染が認められたという報告があることから、全国的に感染率が高くなっている傾向にあることがわかります。

いずれにせよ、沖縄、東京、北陸のデータをみると昔に比べ、若い世代で高リスクを含めたHPVの感染率が上がっていることは事実でしょう。感染率が低いからワクチンは不要というはたともこ氏の主張は、古いデータをもとにしたもので実情とはちょっと違うということがわかりますね。